インブリード(近交繁殖)は、形質の固定や系統作出に有効である一方で、長期的な健全性を損なう大きなリスクを伴います。
1. 遺伝的多様性の低下
近交係数が上がることで遺伝的多様性が失われ、群全体の健全性が下がります。
これは**近交弱勢(inbreeding
depression)**として知られ、種を問わず確認されている現象です。
2. 体質の脆弱化・免疫力低下
遺伝子のバリエーションが狭まると、個体群全体として感染症や環境ストレスへの耐性が低下します。
特定の疾患リスクを持ちやすい系統が形成されるのも、この影響によるものです。
3. 繁殖力の低下
これらは繁殖現場で繰り返し報告されており、統計的にも裏付けられています。
4. 形質・気質の偏り
インブリードは外貌や性格の固定には有効ですが、同時に望ましくない形質(臆病さ、過敏さ、体格の不均衡など)が強調されやすくなります。
まとめ
インブリードは「血統形成の初期段階で一時的に用いる」ことはあっても、持続的に行えば近交弱勢の進行による健全性の低下は避けられません。
そのため、持続可能なブリーディングには、計画的なアウトクロスや血統の見直しによる遺伝的多様性の維持が不可欠です。
インブリードと犠牲の現実
インブリード(近い血縁での交配)は、見た目の特徴を揃えるために一時的に使われることがあります。
しかしその裏には、生き残れない命が犠牲になる現実が隠されています。
近い血縁での交配を重ねると、体が弱かったり、生まれても育たない子猫が出やすくなります。
また、出産頭数が少なかったり、流産や死産となるケースも増えます。
つまり「美しい外見や揃った特徴」が得られたとしても、それは 犠牲となった命の上に成り立っている ということなのです。
健康な命をつなぐために
本当に大切なのは「特徴を揃えること」だけではなく、健やかに生きられることだと私たちは考えます。
健全なブリーディングを行うためには、インブリードに頼るのではなく、血のつながりが近すぎない猫どうしを計画的に掛け合わせて、多様性やスタンダードを保つことが重要だと考えます。