【ソマリと遺伝子疾患のお話】

1PK(ピルビン酸キナーゼ欠損症)とは?

赤血球の酵素がうまく働かず、貧血などを引き起こすことがある疾患です。

検査によって、キャリア・ノーマル・アフェクテッドの判別が可能です。

🟢 キャリア自身は発症しない

🟢 キャリア×ノーマルの交配であれば、発症リスクはゼロ

🟡 キャリア×キャリアの場合、25%の確率で発症猫が生まれる可能性がある

 

この病気は、「劣性遺伝(れっせいいでん)」という遺伝の仕組みによって受け継がれます。

 

 

2PRA(進行性網膜萎縮症)とは?

目の奥の網膜が徐々に機能しなくなり、視力の低下や失明を引き起こす可能性がある病気です。

早い段階で進行が止まるケースもあり、症状には個体差があります。

 

PRAも劣勢遺伝です。

 

🟢 PKと同様、キャリア×ノーマルの交配であれば発症しない。

 

劣性遺伝ってなに?

人も猫も細胞の核と呼ばれる部分に染色体があり、11本の染色体をほどくと2重らせん構造のDNAがあります。

誰しも一度は目にしたとがあるかと思います。

染色体の中のDNAが遺伝子として働いています。

 

遺伝子には劣性遺伝と優性遺伝の2種類があります。

よく誤解されていますが、優性だから優れている、
劣性だから劣っている、という意味ではありません。どちらかが優位、ということです。

最近は劣勢遺伝を潜性遺伝、優性遺伝を顕性遺伝と言います。

今回こちらでは劣勢と優性で話していきます。

 

ソマリ特有の遺伝子疾患のPKPRAは前出でお伝えしたように劣勢遺伝です。

異常な遺伝子”を2つもらったときにだけ発症します。

これを「ホモ(ホモ接合体)」と呼びます。

 

一方で、片方の遺伝子だけに異常がある場合(ヘテロ接合体)=“キャリア”の状態では、猫自身は健康です。

 

F.キャリアの猫は病気になるの?

A.いいえ、キャリアは病気を発症しません。

見た目にも健康で、生活に何の支障もありません。

 

ただし、キャリア同士を交配すると、発症する子猫が生まれる可能性があるため、

ブリーダーは遺伝子検査を行い、交配の組み合わせを計画的に行う必要があります。

 

F.キャリアを避けてブリードをすればいいのでは?

A.キャリア=悪ではありません。

 

健康なキャリアを積極的に排除する事によって別のリスクが生まれます。

 

純血種のブリード、ソマリは特に言えますが世界でも遺伝子プールが狭いためブリーディングストックの数はとても重要になってきます。健康なキャリアを排除しすぎるとブリーディングストックの不足を導き、それによる近親交配が別の遺伝子疾患の増加を招いてしまう可能性さえあります。

インブリード(近親交配)は遺伝子疾患の増加を招く恐れや、奇形やひ弱、極端に臆病・攻撃的などの気質が遺伝的に強調されてしまうこともあります。

(インブリードについては次ページ詳しく説明しています。)

 

純血種のブリーディングは何世代もかけてそのブリードの理想を追求していくことです。

遺伝子疾患についてアフェクテッドを出さない繁殖を心がけていくことで、キャリアを減らし最終的にはキャリアが殆どいない状態に近づけて行きます。しかしこれは世界中で行われていますが、とても長い時間と労力がかかります。

 

むしろ、キャリアだからといって繁殖から外してしまうと、

その猫が持つ美しい被毛・優れたスタンダード・性格・血統までも失われてしまいます。

 

PKは劣性遺伝のため、発症を防ぐことが可能な病気です。

「キャリア × ノーマル」の組み合わせであれば、発症する子は生まれません。

 

🐾正しい知識で、未来のソマリを守る

ブリーダーの仕事は、単に“病気の遺伝子をゼロにすること”ではなく、

命の多様性と健全性のバランスを守ること。

 

だから私達は、検査をしっかり行い、ブリード計画を立てていくことが重要になります。

ソマリの魅力を次世代につないでいくことを大切にしています。

 

 

さて、逆に私たちが疑問に思うこともあります。

ソマリでPKDHCMの検査をしているのを見かけることがあります。。

 

◆もしPKDHCMの「ソマリ」がいたらどう考える?

1. PKDHCMの遺伝子変異が遺伝子検査で陽性だった場合:

→ その猫は純血ソマリではない可能性が高い。

 

特にPKDはペルシャ系由来なので、**「血統書はソマリでも、過去に混ざっていた可能性(故意or事故)」**が疑われる。

 つまり:純血であれば陽性は出ないはずというのが一般的な見解。

 

2. 病気そのもの(例:心肥大や腎機能低下)が診断された場合は?

→ 遺伝性とは関係なく、加齢や環境要因で発症することはある

 

これは「遺伝性のHCM」「遺伝性のPKD」とは別の話

 

PKD遺伝子疾患じゃなくても病気として存在するの?

答え:はい、あります。(ただし、意味が違います)

PKDという名前には2つの文脈があります:

 

種類       内容       ソマリとの関係

遺伝性PKD        ペルシャに多い 遺伝子変異による先天性の多発性嚢胞腎    

ソマリには基本的に関係ない

後天性の腎嚢胞   高齢や慢性腎臓病により、腎臓に嚢胞ができることどんな猫種でも加齢などで起こりうる

 

つまり、「高齢のソマリの腎臓に嚢胞があった」=PKDとは限らないし、遺伝性とは別物。

 

「遺伝子検査でPKD陽性が出たなら、純血ソマリとは考えにくい」

 

「でも、年齢や体調による腎臓の変化で“嚢胞”が見つかることはあり、それはPKDとは別物」